自閉症スペクトラム障害児の脱走対策

【自分の子供が突然いなくなる】

 特に自閉症スペクトラム障害児の場合には事故などの危険性を大きくはらむために、頭を悩ませている方も多いかと思います。

856人の自閉症スペクトラム児に対する調査では、4~10歳までのおよそ半分が脱走を経験し、7~10歳で約30%が脱走を経験していました。4歳をピークに徐々に脱走は減少するものの、15歳付近から再び若干増加傾向になります。

この脱走は様々な状況で起こるために、

英語では“elope”、“wander”、“bolt”などと表現されます。

つまり、個々の状況で「脱走理由(心理状態)」が異なります。

このことについての報告と研究を見て見ましょう。


【なぜ、脱走するのか】

脱走には目的がないこともあれば、何処か誰かのところに行こうとしたり、恐怖を感じていたり、感覚過敏のせいであったり、興味、退屈しのぎから発生します。

 大多数の親が、何かしようと逃げている最中には、子供は楽しんで熱中していると答え、極少数の親だけが不安や悲しそうであると答えていました。 

 また、この調査では脱走理由も検討しており、最多だったのが「周囲の探索自体を楽しんでいる」で、中でも「お気に入りの場所に行きたかった」が理由の一番でした。

「好きな人に会いたかった」については、もっとも低くなっていました。違う研究においても、走る・探索自体が楽しい(53%)、お気に入りの場所に向かう(36%)、不安から逃れる(34%)、感覚過敏からの逃避(30%)、興味あるものが見たい(30%)、特別なお気に入りを追いかけてしまった(30%)など、楽しんでいることが脱走理由として上位に報告されています。


【脱走が起きる場所と危険性】

脱走で注意しなければいけない理由は、命に係わる交通事故やそのまま迷子になることがあるからです。

 ある報告では、脱走が起きる場所としては74%が自宅、40%がお店、29%が学校・幼稚園でした。Connie Andersonらは、脱走した26%の子供に溺水の危険性があり、65%は交通事故の危険性があったとしています。

Paul Lawらは脱走経験のある自閉症スペクトラム障害児を持つ親の35%が、自分の子供は名前、住所、電話番号などを他人に伝えることが出来ないと報告し、31%の親が脱走後に警察を呼んでいました。

 脱走の程度は、自閉症スペクトラム障害の重症度を相関しているとも言われ、本人は楽しんでいるとはいえ、56%親は非常にストレスな状況だと回答し、50%の親がなんらかの機関に相談していました。さらには、43%の家族が夜安心して眠れる予防策をとり、63%の家族が野外アクティビティでの脱走に対する安全策を立てていました。


個々の子供で状況と理由を検討していく


予防策が大きく違ってくることがわかるかと思います。


困った時に助けを求めること、名前を言えることは重要ですね


やみくもに叱ったり、見張るのではなく、なぜ脱走するのかを考えることから始めるのが、予防には重要で効果的です。


次回は具体的な予防方法と対策について考えていきます。



【参考文献】
・Connie AndersonM,et al. Occurrence and Family Impact of  
 Elopement in Children With Autism Spectrum Disorders.
 Pediatrics  2012;130;870
・Paul Law. Elopement and Wandering. IAN Research Report April
 20, 2011
・Irene van der Zande.“Managing Wandering for People With   
 Autism”
 kidpower http://www.kidpower.org/